素直になるのはキミにだけ

運命の、

【沙弥side】

「沙弥、もう全部積んだ?」

「うん。大丈夫」



あたしは家の前に立ち、昨日まで普通に暮らしていた我が家を見つめた。




「しばらく、お別れだね」



生まれてから17年間ずっとこの家で育ってきた我が家と、お別れだ。




「ねえ、沙弥。本当にいいの?」

「……せめて蛍人とか部活の人には」

「…大丈夫、全部済ませてあるから。」


なんてのは、うそだけど。


あたしは転校することを学校側と茉夏にしか話していない。

秋本はお兄ちゃんたちから聞いてるかもしれないけど、いつ行くとかは黙っていてもらった。



お別れの瞬間、秋本が、みんながいたら…きっと行きたくなくなってしまう。



だから、茉夏にもきょう出発することを話したうえで、見送りには来ないでと伝えた。



そして、秋本が部活に行っているうちに、別れを告げず旅立つ。


…我ながらひどい幼なじみだ。


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