素直になるのはキミにだけ
「…あのなぁ、抱きしめたわけじゃねえし。つーかそもそも俺にそんな変な趣味はない。」



あたしはパッと川瀬くんから離れた。



……でも、怖くて後ろは振り向けない。



「あー!!沙弥!!!なんでなんで!?」

「……茉夏」



よりによって、このタイミングで…!



後ろに立つ…というか後ろからあたしを抱きしめる男は、あたしを開放して今度は腕をつかんだ。



「……センパイ、ちょっと向こうで話そうか?」

「……いい。遠慮しとく。そろそろ試合も始まるし…」

「だめ。こっち来て」


だめなら最初から聞くなよ……!!



秋本に腕をつかまれ、呆然とする緑ヶ丘の部員たちの間を通ってあたしは連れ去られた。

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