私の二人の神様へ
なんせ榊田君と美玖ちゃんのお姉さんだ。
美形一家に違いない。
だから、無駄だとは思いつつも今日は一段と気合を入れておしゃれをしてきた。
だが、霞むこと間違いなしなのはわかっている。
榊田君一人つれているだけで、これだけ注目を浴びるのに、これが三人となると想像もつかない。
プレッシャーだ。
それ以上に、プレッシャーなのは榊田君の彼女としてはじめて会うからだ。
榊田君を大層可愛がっているみたいだし、気に入ってもらえるだろうか?
榊田君のお姉さん談義を遮り、尋ねてみる。
「ね?おかしくないよね?派手ででも地味でもない服選んできたけど、気に入ってもらえるかな?」
「姉貴の服の趣味なんて俺が知るか。水野とはまるっきし趣味が違うのは確かだ」
「違います!お姉さんが、私に対して不快感を抱かないかどうか聞いてるの!」
「それこそ知るか。姉貴に気に入られる必要がどこにあるんだ?むしろ、気に入られると今後面倒なことになる」
彼は眉間に力を入れた。
そんなにいつも眉間に皺を寄せていると、歳を取ってから大変だと思う。
「嫌われて、交際反対されたりしたら大変じゃない!もっと真面目に答えてよ」
そう怒ると、榊田君は呆れたように首を振った。
「お前、少女マンガの見過ぎだ。それより、これから映画を観に行くのはどうだ?あずき主演の映画だぞ」
そう言って、つり革のポスターを指差した。
その映画はドラマの続編として公開されているもの。
だが、榊田君とは見たくない。
というかドラマも本来なら榊田君と一緒に見たくなかったけど、彼を家から追い出すことに毎回失敗し、全話、彼と見るハメになった。