私の二人の神様へ
私が真剣に見ているというのに、
「あずきの泣き面が、水野の普段の顔五割り増しレベル。広也の目は相当悪い」
とか何とか、あずきちゃんに似てないことなんてわかってるし、広君のお世辞だってわかっているのに、いちいち余計なことを言う。
だから、いつも喧嘩になり、クッションで思いっきり榊田君を叩き、逃げる榊田君に回転地獄蹴りを繰り出すが一発も当たらないで私が息を切らす。
そして、いつの間にかドラマは終わっているのだ。
だが、私にちょっかいをかけずに大人しく見ていることもあった。
ところがどっこい、その時にでさえ。
「榊田君。このドラマの最終話で泣いている私とは対照的にあなたは笑っていたわよね?」
そう、そのせいで雰囲気がぶち壊しだった。
今でも根に持っていたりする。
「そうだったか?」
そっぽを向きながら、首筋を掻く榊田君。
「ええ。あんな感動的な最後で笑う榊田君と観るなんてごめんだわ」
「誤解があるようだから、訂正しておく。あのドラマは実に感動的だった。滝のように涙を流したくなるほど」
榊田君が滝のように涙?
そんなのは地球が一回転半してもありえない。
馬鹿にされているようで腹が立つ。
「しらじらしい嘘はやめて。感動した人がどうして笑うのよ?」
「あれは水野の泣き顔の不細工さに笑ったんだ。お、お前、涙は右目から流して鼻水は左からだぞ?」
榊田君は思い出し笑いを何とか押し込めようとの拳を口に当てた。
だが、目は三日月になり、腰を折り曲げ、肩を振るわせている。