私の二人の神様へ
「さ、榊田君。お姉さんになんていう口の聞き方するの。し、失礼でしょ?」
いつもならもっとキツく叱るところだけど、榊田君の恐ろしさに若干弱腰の私。
「明美姉。さすがに、今のはマズいよ」
「ん?何かマズいことを言ったか?」
きょとんと、我々を見るお姉さん。
まったく、悪気がないらしい。
なるほど、お姉さんと会わせたくなかった理由はこれか。
榊田君が怒っているのも気づいていないようだ。
尊敬してしまうほどの太い神経。
そんなことに、感心する時間は一瞬しかなく隣からの冷気に私は身震いした。
榊田君が言葉を発するのと同時に私が大きな声で割って入った。
「いいえ!まったくそんなことは!あ、あの!それよりおなか空いちゃって、何かおすすめありますか?」
「お~そうだった!小春はパスタが好きだと聞いてな。ここのは特におすすめなんだ。特にこれなんかは」
そう言ってメニュー表を差し出してくれた。
今度はあっさりと、思い通りになった。
話をまったく違うのに変えるのが得策だったらしい。
榊田君は嫌な顔をするかもしれないけど、こんなお姉さんがいたら良いのにな、そう思った。
私の好みを聞いて、おすすめを提示してくれるその優しい顔を見ながら、榊田君と美玖ちゃんが羨ましく感じた。