私の二人の神様へ
結局、私が頼んだのはお姉さんイチオシの夏の彩りパスタ。
「本当においしいです!見た目も可愛いし」
お世辞抜きの感想をお姉さんに言うと、満足そうに微笑んでくれた。
「それは良かった。いや、小春の存在自体が可愛いとはこのことか!特に笑顔が可愛いぞ!」
何と答えれば良いのかわからず、苦笑で返す。
「どうして、苦笑いするんだ?」
お姉さんは私の顔を覗き込んだ。
そう覗き込まれるとドキドキして熱くなる。
「明美姉。自分のこと褒められたら普通、返答に困るよ。小春ちゃん照れてるじゃん」
美玖ちゃんは器用にパスタをフォークに巻きつけ口に放り込んだ。
「いえ、何と言いますか。こんな可愛らしい弟さんと妹さんがいらっしゃる明美さんにそう褒められると恐縮してしまって」
「そういうことか!二人ももちろん可愛いが、小春も負けず劣らず可愛いぞ!」
にこやかに頷くお姉さんに、榊田君と美玖ちゃんは顔をしかめた。
「おい。その可愛いに俺も入るのかよ」
「お兄ちゃんと同列の可愛いって、あんまりだわ」
顔だけじゃなく声色からも不本意さが伝わってくるが、お姉さんは気づかないらしい。
「何を言ってる。俊も美玖も目に入れても痛くないほど可愛いぞ。なぁ?小春」
私もお姉さんに習って二人のほうを向き、大きく頷く。
「可愛くねぇ」
榊田君は先ほどより眉間に皺をよせた。
「あっ!榊田君。今の言い方、すごく可愛い!」
私がぽんっと手を叩いて言ったら、眉と口元を引きつらせた榊田君。
「……水野。お前、人をおちょくるとは良い度胸してるじゃねぇか」
怖い怖い。
ここは刺激せずに、素直に謝るのが得策だ。