私の二人の神様へ
料理を作り終え、光沢のあるテーブル並べると、庶民的な料理なのに何故だかディナーというような大それた料理に見えるのが不思議。
「ん?これは甘いな?砂糖か」
お姉さんは、卵焼きを咀嚼して首を傾げた。
「小春ちゃんの卵焼きは甘くてもおいしいから不思議。お兄ちゃんがいつもねだってるだけある」
「え?美玖ちゃんは甘い卵焼きダメだったの?」
兄妹と言っても好みは違うか。
味付けを前もって聞くべきだったと後悔する。
「母さんが昔、砂糖の卵焼きを出したことがあるんだが、あれは榊田家崩壊の危機だった」
「水野。八度目だ。姉貴には妄想へ……」
榊田君の言葉は暗記済みだ。
遮っても問題なし。
「それじゃ、お姉さんも塩派なんですか?榊田君だけ好みが違うんですね」
「お兄ちゃんも塩派だよ。小春ちゃんの料理にケチつけるなんてお兄ちゃんにはできないだけ。それに、おいしいし」
卵焼きを二切れ同時に放り込む美玖ちゃん。
ケチもなにも、塩味の卵焼きじゃなくて、砂糖が良いと榊田君本人が言ったのだ。
「どういうこと?」
「……お袋の料理は壊滅的なんだ。だから、甘い卵焼きなんて食えなかった。それだけで、他のところでは砂糖派」
「ん?俊。そんな話、私も聞いたことないぞ。お前はどこでも塩……」
「姉貴と暮らしてたのなんて、俺が中学の時までだろ?だから俺の高校時代の話だってただの噂……」
何だか良くわからないけど、榊田君以外は卵焼きは塩派と覚えておけば問題ないだろう。
またまた、榊田君の話を遮り立ち上がった。
「今から作りますから、ちょっとだけ待っててください」
「水野。砂糖も」
四人分の卵焼きは大量なのに、それでもまだ食べようとする榊田君。
お姉さんも美玖ちゃんもすごい食欲だ。
三人の旺盛な食欲でお腹が膨れそう。
榊田家は良く食べるから多すぎるくらいの材料を、これもインプット。