私の二人の神様へ
夕方、仁くんのマンションの最寄り駅に着くと、仁くんが待っててくれた。
電車の時刻は言ったけど、迎えに来てくれるとは。
夕焼け空の中、微笑む仁くんに私も柔らかく微笑み返す。
他のものなんか、目に入らない。
仁くんしか私の世界にいないかのように。
オレンジ色の淡い光に滲んだ手を自然と取った。
想像と同じ体温が心地良い。
仁くんを見上げ、にっこり笑った。
ここで言う言葉はお迎えありがとうとか、会いたかったとか、そんな言葉なのに、自然と口から出た言葉は違った。
「大好き」
もう今は恋じゃない。
特別な感情を仁くんに持っているけど恋じゃない。
胸が少し疼くのは古傷が痛むようなもの。
こうも、自然と言えるなんて。
手を離した瞬間に、この恋ははじまった。
その時から、気軽に言えなくなってしまっていた言葉なのに。
今の恋が、仁くんへの恋を終わりにしてくれて、本当に穏やかな関係を仁くんと築けている。
「俺も」
そう言って私に色素の薄い瞳を向けた。
元から、茶色がかっていたから今は、夕焼けの色のよう。
それを見ながら手を離した。
手を繋いで歩くことはもうない。