私の二人の神様へ
仁くんの家につくと、佳苗さんがにっこり出迎えてくれた。
子供のような笑顔で。
「おめでとうございます!小春さん、格好良い!」
スリッパでぴょんぴょん跳ね上がり、喜びを表す佳苗さん。
身に着けているエプロンは大層汚れている。
私のためのごちそうを作ってくれていたと、すぐにわかった。
「お祝いに佳苗さんの手料理食べられるなんて、本当に受かって良かった!」
佳苗さんと同じ笑みを返す。
私も、彼女と同じで子供のように満面の笑みのほうが似合うと思う。
結局、仁くんの前で、気取った私でいることはできない。
やっぱり、小さい頃と同じ態度を取ってしまう。
だから、昔と同じ関係のまま終わってしまった。
それでも、彼の選んだ相手が佳苗さんで、彼の子供があかりちゃんであったから良かったと思う。
彼と結ばれることがなくて。
私にとって佳苗さんは永遠に憎い存在でありながら、永遠に憧れる存在だ。
そんな佳苗さんが表情を変えた。
「え、ええ!?そんなこと言われると、言いにくいな。ほとんど、仁が作ったようなものなんですよ」
言いにくいと言いつつ、正直な佳苗さん。
「それも予想済みです」
からかう笑みを佳苗さんに向けると、佳苗さんがむくれてしまった。
そんな彼女を見て、仁くんと顔を見合わせて笑う。
温かく、穏やかな空間に、今までの緊張が解き放たれた。
私が好きな、かぼちゃの天ぷらやクリームシチュー……
もう何でも私の好きなもの。
不思議というか、当たり前と言えば当たり前だけど。
昔私が好きだったものでも、仁くんと離れた七年間で好みも多少変わった。
野菜嫌いが今では好きだし。
それなのに、今私が好きなものが用意されている。
私も、仁くんの好きなものが感覚でわかってしまうけど、考えてみれば不思議。
今日はあかりちゃんを思う存分抱っこできたし、仁くんも穏やかで優しい。
それはひとえに榊田君がいないからだ。
あかりちゃんを榊田君はいつも独り占めするし、いつも仁くんと喧嘩する。
これからも、そうなることは確実だから、彼がいないうちにあかりちゃんをたくさん抱っこしておかないと。
あかりちゃんを抱っこしている私の姿を仁くんは、目を細め微笑みつつ、写真を撮る。
親バカであり、幼馴染バカなんだと、佳苗さんだけでなく私も苦笑した。
でも、ちゃっかり仁くんと三人で写った写真も撮ってもらって舞い上がっている私も同じ。