私の二人の神様へ
そんなのん気に構えていた私に挑戦者が現れたのは、ようやく秋らしくなった十月のことだった。
少しずつ木々も赤く色付き、お母さんからくるみやぜんまいが届き、榊田君が大層喜んでいた頃。
学部の友達と居酒屋で飲んでいた。
女の子の飲み会と言うのは、恋愛話になるのがもっぱら。
私も好きだ。
私と榊田君は付き合っていることになっている。
そして榊田君が彼氏ともなれば私の話を聞きたいと思うのも当然。
毎回、話を逸らすのに苦労する。
今回は話を逸らすことが不可能だった。
それは最近、榊田君が親しみやすい存在になったと大盛り上がり。
きっと、この話がしたいがため、この飲み会が開かれたのだ。
何でも、主催者の麻子ちゃんは元彼にしつこく付き纏われ、駅前で口論になっていたらしい。
逆上したその元彼が手を上げたところ、止めに入ったのが偶然そこにいた榊田君。
元彼は榊田君に抵抗するも相手が悪い。
あっさりと手首を捻られ蹴飛ばされて、涙目で退散していったとか。
彼のちょっとした武勇伝もお酒が入った彼女たちには最高の肴。
「小春は良いわよね。あんな王子様を彼氏にできて!」
この王子様という単語に違和感がありすぎる。
私にとって、王子様とは仁くんみたいな人だ。
失礼だが、あの無愛想で恐ろしい口を持つ榊田君に王子様は無理がある。
「榊田君に王子様は少し無理がないかな?良く言っても、不遜な王様だと思う」
玉座に偉そうに足を組んで、ふんぞり返っていそうだ。
そしてワイングラスを片手に。