私の二人の神様へ
「面白かったね!最後のほうは涙が止まらなかった」
パンフレットを最後に購入して、広君と映画館を出た。
「最後は予想外だった。手紙のシーンとかが良かったな」
「そう!さすが広君!わかってる!私も手紙のシーンが一番良かった。素敵だわ!」
広君とは趣味が合う。
仁くんと榊田君とこういう恋愛系の映画を観るより、圧倒的に広君が良い。
こうして、同調してくれるのだから。
仁くんは寝てしまうし、榊田君は揚げ足取りで雰囲気をぶち壊しにするのだ。
試写会が終わったのがちょうどお昼時で、広君がおいしいお店を知っているということで、広君にエスコートを頼んだ。
広君と二人で映画を観る機会が多いが、いつもチケットは先に購入してくれているし、その後の食事の場所も押さえていて、女性のエスコートに長けている。
女の子の心をしっかりわかっているところが、広君のモテるポイントなのだろう。
大学ですでに六人の彼女と出合い別れを繰り返している広君にはお手の物か。
映画の話をしながら歩いていると、私のレーダーに何かがひっかかった。
この感覚は。
直感的にその方向に目を向けると、国道を挟んで隣の道路を歩いているのは仁くん。
「あ!仁くん!」
私は、駆け出した。
人と車が多くて、仁くんの姿が見え隠れする。
その時、仁くんが後ろを振り返った。
そして、私をすぐに見つけてくれた。
お互い、近くにいると何となくわかってしまうのは今も変わらない。
仁くんは私のほうへ来るためスクランブル交差点を渡り、私はそこまでひたすら走った。