私の二人の神様へ
「どうすれば、心の準備ができる?」
「それは俺にはわからないよ。ただ、俊なんて待たせておけばいいんだよ」
「今、榊田君を待たせて可哀想って言ったばかりなのに」
俯きながら、目だけで広君を睨む。
「小春ちゃんには待たせる価値があるんだよ」
茶目っ気たっぷりにウインクが寄越される。
「本当にそう思ってる?」
「少なくとも俊は一生でも待つ覚悟だよ。もう自分でも恋の奴隷なのがわかってるから。で、俊ととりあえず元通りになりたいんだよね?」
根本的な解決が、私にはまだ覚悟ができていない。
それでも、今の状態を早くどうにかしたい。
榊田君のことで、頭がいっぱいでロクに寝ることもできていない。
好きな人に嫌われたままで過ごす二週間は本当に長かった。
「脅す形じゃなくて、榊田君が許してくれる形でなら」
榊田君が望むものを私は与えないのに、榊田君には願い事ばかり。
私に愛想を尽かさない榊田君は実は博愛主義者なのではないだろうか?
「それなら、今日これから夕食作ってよ。俊、家にいるってさ。俺も一緒に食べるから。これなら一石三鳥でしょ?俊も許すタイミングを逃してるみたいだし、俺は小春ちゃんの手料理食べられるし!」
榊田君からのメールを私にかざし、得意げに笑った。
広君も一緒なら家に入れてくれるかもしれないし、話を聞いてくれるかもしれない。
それに食べ物で懐柔されてくれるかもしれないし。
「広君に相談して良かった。ありがとう」
「小春ちゃんに感謝されるのが報酬だよ。俊には借りを作っておいたほうが色々使えるしね」
広君は肩をすくめて、悪代官のように笑った。