私の二人の神様へ
今日は私一人で作ると、二人を残し、キッチンへと立った。
仲直りのきっかけを作りたいのだから、誰かに手伝ってもらったら意味がない。
一つ一つは簡単でもメニューが多いから、時間がかかる。
見た目にも味にも、いつも以上に気遣った。
特に卵焼きは。
彼は私の卵焼きに匹敵する料理はこの世に存在しないと公言しているくらい、好きなようだから。
そこまで言ってもらえる卵焼きを作れることが幸せだった。
それも途絶えてしまったけど、こうして、また作れる機会が巡ってきた。
榊田君は一人で何人分もの卵焼きを食べるけど、今日はわからない。
私の料理なんて食べたくないと思うかもしれない。
卵焼きだけは残されたくなくて、人数通り三人分だけ焼いた。
いつもより時間をかけて丁寧過ぎるくらいの作業をやったのに、出来上がったのは普段とまったく変わりがない料理。
それでも、しっかり作れたのだから良かった。
ドアをそろそろと開けて、準備が整ったことを伝える。
広君は笑顔で返事をしてくれたけど、榊田君はそのまま私の横をすり抜け、洗面所へと入った。
小さいテーブルに三人分の食事は何とか収まった。
こうして見ると、たくさん作ったように見えるから不思議。
榊田君と向かい合う形で座り、いただきます、と三人して声をそろえた。
卒業旅行の話をしたりして、いたたまれない空気にはならなかった。
食事の前に、広君が榊田君に何か言ったのかもしれない。
私に話しかけることはないが、私の問いかけには答えてくれるし、冷ややかな視線も向けられることはなかった。