私の二人の神様へ
「おいおい。俊。デートの邪魔をしないでくれよ?」
ニヤニヤ笑う広君を榊田君がうっとうしそうに睨みつける。
「何がデートだ。広也は、アシカだかアサリだかのことでも考えてろ。余計な世話焼きやがって」
「全然違う!麻美ちゃんだ!」
広君の新たな恋人候補のようだ。
本当に大学生活を満喫している広君。
とにかく、榊田君と二人きりになれる。
思ってもいないことだ。
「広君。本当にありがとう」
「お礼より、大好きって言ってくれると嬉しいんだけどな?」
「もちろん、大好きだよ。最高のお友達!」
「今度はお友達が余計だよ」
広君はわざとらしく嘆いてみせた。
本当に、広君のおかげ。
今度、お礼に広君の大好物を作ろう。
広君とはアパートの前で別れ、角を曲がったところで榊田君が私の手を握った。
久しぶりだからだろうか、繋いだ手から体中に熱が伝わり、心臓がトクトクと音を立てる。
暗闇の中を、何も話さずゆっくり歩いた。
それは心地良い静寂で、久しぶりの感覚であった。
「俺は佳苗のように寛大にはなれない」
「え?」
いきなり榊田君が話しはじめたから、隣の彼を反射的に見上げた。
彼はまっすぐ前を見たまま続ける。
「佳苗に文句を言ったら、笑われた。お前が好きなのは俺なのに何をそんなに不安がるんだ、ってな」
「それに仁くんが好きなのは佳苗さん。佳苗さんはしっかりわかってるし、仁くんを信頼してる。だから許したんだと思う」