私の二人の神様へ
「もう、私に何を言っても無駄だと思ってる?諦めちゃった?」
あの日の、木漏れ日に見え隠れする榊田君の顔が鮮明によみがえる。
失言をした瞬間、榊田君の目には憎悪、そして。
私への諦めが映っていた。
それは今でも変わらなくて、もう私に対して何かを期待することも求めることも諦めてしまったのだろうか?
あれだけ嫌がっていたのに、構わないなんて。
榊田君の手を握る力を強くした。
「勘違いすんな。あんな疫病神を恐れていると思われるのが心外なんだ」
「へっ?」
彼のわけの分からない返答に私は間抜けな声を上げた。
「あいつを意識しているなんて思われてみろよ?屈辱以外の何ものでもない。疫病神ごとき、俺の敵じゃない」
な、何て言う負けず嫌い。
負けず嫌いな私もこれにはびっくりだ。
「で、でも嫌なんだよね?榊田君が嫌がること私はしたくない」
「なら、断らずに仁を招け。あいつに小馬鹿にされるのが俺は一番気に食わない」
「本当に良いの?」
榊田君の真意を探ろうと目を凝らすと、彼はいつも以上に威張りくさった表情で大きく頷いた。
「あいつに言っておけ。仁のことなんか気にもかけてないから快く承諾した、ってな」
仁くんに、すでに榊田君が嫌がっていると言ってしまったことは伏せておこう。
何とも微妙な理由で明日の夕食は仁くんとできることになったのだ。
ゆっくり歩いていたけど、私と榊田君のアパートは近いからあっという間についてしまった。