私の二人の神様へ
心地良さに委ねて彼の胸にもたれかかっていると、どこからか酔っ払いの叫び声が聞こえた。
私は慌てて、榊田君から離れた。
こんな場所で抱きつくなんて、何てことを!
自分の大胆な行動に慌てながら周りを見回した。
「別に、そんなに慌てることないだろ?」
のん気な榊田君の声を聞いて、私の慌てている心の半分を分け与えたくなる。
「公道でなんて!だ、誰かに見られたかも!」
「ここはアパートの敷地だから公道じゃない」
そんな細かいところを私は気にしているんじゃない。
彼の揚げ足取りに拳を震わせた。
「私はそんな細かいところ気にしてるんじゃないの!」
「誰もいないし、別にこれぐらい見られたって構わないだろ?」
「良くありません!最近の若者は人目も気にせずって言われるわ!」
榊田君は呆れたように肩をすくめてみせた。
その何とも余裕綽々な態度が気に食わない。
「そもそもお前が抱きついてきたんだ。言われるなら、最近の女は大胆になったな、だ」
「榊田君!!」
私は真っ赤になりながら叫んだ。
「今の水野の声で人が寄ってくるかもな」
ぼそりと言われて私は慌て、口を塞いだ。
意味がないことだったけど反射的に。