私の二人の神様へ
二人で微笑みながら、たわいもない会話をしていたが、すっと仁くんは姿勢を正し、私の顔を覗き込むように見た。
茶色がかった優しく温かな瞳が私をしっかり見つめ、離さなかった。
そんな彼にたじろいたけど、手を優しく掴まれると肩の力が抜け、問うように見つめ返した。
「榊田で本当に良いのか?」
これまで、何度も問いかけられたけど、あまりに真剣に尋ねられたから、一拍考える。
この私を掴んでいる手は優しく温かい。
オレンジ色の光と同じく私を優しく包んでくれる。
だけど、今私がずっと手を繋いで歩いていたいと願うのは。
どこかそっけないけど、優しく温かい手で。
ずっと、見つめていたいと思うのは、あの漆黒の瞳。
「うん。榊田君がどうしようもなく好きなの。ずっと一緒にいたい」
「それは男として好きなんだな?」
私が赤くなった頬を隠しながら頷くと、仁くんは降参と言ったようにため息を吐く。
「小春がああいうのを選ぶとは予想外だった。寄りによって、節操なしで生意気なガキを選ぶとは」
「予想外じゃないでしょ?榊田君はすごく誠実だし、大人だもん。確かに生意気ではあるけどね」
冗談めかしに言うと、仁くんは大層悲嘆な表情を浮かべた。
「もう一つ予想外だ。小春の目がこんなに節穴だったとは」
「どうして、そう榊田君を悪く言うの?私にはもったいないくらいできた人だよ?」
「馬鹿言うな。逆だ。榊田に小春はもったいない。不釣合いだ」
「仁。お前は往生際が悪いな」
榊田君はドアを足で閉めながら、憐れみの笑みを仁くんへと浮かべた。