私の二人の神様へ
「……じ、仁くん。ここで黙んないでよ。な、何か言ってあげないと榊田君が馬鹿みたいでしょ?」
「……あ、いや、あ、すまん。ははっ。何て言えば良いのかわからなくて。こ、小春から何か言ってやってくれ」
「やっ、やっぱり?私もあまりに痛々しくて、何て言えばわからなくて!」
「さ、榊田。お前、自分のキャラ考えてから、そういう冗談言えよな。お前が言ってもまったくウケないぞ。かなり引く」
「そ、そうだよ。せめて、突っ込みが入れられるくらいにしてよ!寒すぎて死んじゃう!」
「……お前ら。お、俺に喧嘩売ってるのか?」
榊田君が眉も目も口も引きつらせて笑うから、私と仁くんも口を引きつらせて笑った。
三人の乾いた笑いがしばらく続いたのは言うまでもない。
「さて、そろそろ帰るかな」
買っておいたお酒が底をつき、仁くんは立ち上がった。
「えっ!?もう?」
「十時過ぎてるからな。おい、お前もとっとと立て」
寂しがる私の頭を撫でながら、仁くんはポテチを食べている榊田君に目を細めた。
「何で、俺がお前と一緒に帰るんだ。一人で帰って、できれば通り魔に襲われてくれ」
お酒の代わりにお茶をコップに注ぎ込み、帰る気がないのは一目瞭然。
「榊田君のことは気にしないで。家近いし。そう!佳苗さんにババロア作ったから持って帰ってね」
「こんな危ないやつと小春を二人きりにできるか!招かれてもいない客のくせに厚かましい」
そう言って、ポテチを取り上げ仁くんが口に流し込む。
これは絶対喧嘩になると思いきや、榊田君はお茶を飲み干すと素直に立ち上がるものだから、私と仁くんは目を見開いた。
そして、部屋のドアを開け、意地悪く仁くんに笑ってみせた。