私の二人の神様へ
「お前と違って、俺は明日も明後日もいつでも水野に会えるからな」
それだけ言うと、手を軽く振り、さっさと帰っていった。
「な、何なんだ!!あの余裕ですみたいな態度は!あいつは本当に可愛げがない!」
「榊田君が可愛げがあったら気持ち悪いよ」
「確かにそうだが、あの態度のでかさが気に入らん」
プンプンと怒りながら靴を履く仁くんにババロアを手渡し、私は小首を傾げた。
これは、お願い事をする時の私のくせ。
「それが榊田君の持ち味。ね、それより駅まで送る。良いでしょ?」
「ダメだ」
間髪入れずに却下の採決。
私は頬をこれでもかと膨らませ立てついた。
「仁くんが通り魔に襲われたら、私が助けるのに」
「またそんな顔して。通り魔なんか返り討ちにするさ」
「少しでも長く一緒にいたかったのに」
「俺も。でも小春に夜道を一人で歩かせるわけにはいかない」
仁くんの手は魔法使の手だ。
この手が私に触れるだけで、こんなにも幸せを感じるし、彼の言うことを聞いてしまうのだから。
小さい頃から仁くんに対しては聞き分けが良かったから、お母さんは私が悪いことをすると何でも仁くんに言いつけていた。
「わかった。気をつけて帰ってね?」
「腕が立つから大丈夫だ。俺が通り魔に襲われたとしたら、犯人は榊田だ」
至極真面目な顔で言うから、思わず笑ってしまった。