私の二人の神様へ





 嗚咽をこぼしながら泣いていると、パンッと何かを弾く音が聞こえた。


 驚いて顔を上げると榊田君。


 弾かれたのは私の頭を撫でていた仁くんの手。


 そして、何が何だかわからないうちに視界が遮られる。


 肩を掴まれ身体を榊田君の方に向けられると、彼の袖口で顔を思いっきり拭かれたからだ。


 それこそ、こびりついた汚れを取るかのごとく。



「い、い、痛~いぃ!!や、やめて」



 私の訴えにまったく耳を貸さない榊田君は一層強く擦る。


 そんなに擦られたら赤く腫れあがる。


 日頃のお肌の手入れが無駄になってしまうではないか。



「小春に何するんだ!?」



 私の訴えは榊田君に届かずとも仁くんには届いた。


 慌てて私の肩を掴んで榊田君から離した。


 強く擦られた目を何とか左目だけうっすら開けると、榊田君は大層不機嫌だ。
しまった。


 仁くんに縋って泣いているところを見られるなんて。


 気分を害するのは必至。


 もしかしたら、まだ仁くんが好きで泣いていると思われたかも。



「あ、あのね。違うの!」



 私がわたわた弁明しようとしたけど、榊田君は私なんか見てもいなかった。



「気安く水野に触るな。性悪が感染したらどうするんだ」



「それならお前こそ触るな。小春は繊細なんだ。お前みたいな乱暴者が触れていいわけないだろ」



「違う。水野はただの泣き虫だ。繊細なやつに失礼だ。謝れ」



 涙はすっかり乾いた。


 ヒリヒリする顔をさすりながら私は割って入る。



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