私の二人の神様へ
「ど、どうしたの?榊田君?帰ったんじゃ?」
「本を借りようと思って」
「へ?ああ、さっき読んでた経済学の教科書?」
「そうだ。彼女の誕生日に現金を贈った男が振られた理由が経済理論で示されていたんだが、読み途中で気になってな」
「ああ。それね。興味深いよね。何だっけな?忘れちゃった。何故、牛は絶滅しないのか、は答えられるよ!」
そこで、物知りな仁くんが口を開いた。
「男が振られたのはな……」
「お前に教えてもらうことは何もない」
だが、榊田君に遮られてしまった。
あとで、自分で読み直すしかなさそう。
「榊田、聞くのが怖いんだろ?自分の未来を重ねて」
「水野。性悪に感染してないか?ここまでの性悪だと感染力が高い」
「はっ。お前は嘘吐きに加えて狭量なやつだ。本当は俺たちのことが気になって戻ってきたくせに」
鼻で笑う仁くんに、同じく鼻で笑う榊田君。
ああ。
またまた喧嘩の兆候だ。
あのまま、お勉強的な方向に話が進めば有意義だったのに。
喧嘩になる前に私は二人の間に割って入った。
「榊田君。教科書は明日渡す。今日は私が読む」
「はぁ!?お前、ズルいぞ!」
だって、気になってしまったのだ。
持ち主は私。
たとえ、授業が終わって二年読んでいなかった本だとしても。
「はい、はい。二人ともこんなところで喧嘩せずに帰りましょうね。それではごきげんよう~」
手をパンパンと叩き、二人を追い払う。
二人の喧嘩に付き合うのも疲れてしまった。
そんなに喧嘩したいならば、二人で仲良く喧嘩をしながら帰れば良いのだ。
おいっ!と二人の突っ込みは無視して笑顔でドアを閉め、そのまま施錠する。
二人は何やら言い合いながらも歩き出したのがドア越しにわかった。
さぁ、疲れを癒やすべくお風呂に入って、とっとと寝よう。