私の二人の神様へ



 色香溢れる美女と浮き名を垂れ流し続けていた榊田君だ。


 私のあまりに子供っぽい下着に引いた可能性は十分にありえる。


 道場は夕方から。


 洗面台に置いてある時計をガバッと引ったくる。


 まだ時間はたっぷりある。


 これからランジェリーショップに駆け込み、ついでに部屋着もまともなのを買わなければ。


 昨日の挽回をしなければ!


 少しでも色香漂うようにしなければ!!


 妙な使命感に燃え、瞬神のごとく着替え、瞬神のごとく部屋に舞い戻り、荷支度を整えはじめる。


 よしっ、完璧!と勢い良く立とうとすると、水を差すかのように慌てん坊の主婦のテーマ曲が流れた。


 のん気な曲にずっこけつつ携帯を手に取ると、そこには私を昨夜から振り回し続ける榊田君。


 一気に顔が引きつる。


 テレビ電話ではないのだ顔が引きつったところで問題はないが、声まで引きった。



「お、おはょぅ。ど、どうしたのぉ~?」



「……いつになく変なやつだな。まぁ、いい。今日、道場まで暇だろ?なら、今から……」



「無理、無理、無理!!わ、私は忙しいアルネ!もう、忙し過ぎて、私が百人いても足りないくらいにぃ!」



「はぁ?お前が百人って、社会の迷惑を考えろ」



 榊田君の失礼発言に反応しているほど私は暇ではない。


 そう、榊田君みたいな暇人ではないのだ。



「と、とにかく!い、忙しいから、切るアルヨ?いざ、さらば!」



 一方的に電話を切り、携帯で情報を検索しながら色香を探し求め私は旅に出たのだ。




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