私の二人の神様へ
「ええ。最初に言ったでしょ?そうさせてもらうわ。私、俊のことがとても気に入ったの。容姿だけじゃない。彼とは話が合うし、あれだけ完璧な男見たことないわ」
完璧?
どこが!?
デリカシーなしの上に、女性に節操なしの不遜な王様じゃないか。
わかってる。
昔のことだ。
昔のことを責めるのはお門違いだが、こんな風に私が喧嘩を売られ、負けたのは間違いなく榊田君のせい。
「完璧かどうかは議論の余地がありますけど、そう思えるなら、羨ましいことです」
私にはどう考えても、完璧の漆喰が剥がれているような気がする。
彼女はファンサービスみたいな笑みで私たちを見回し、
「許可が取れたみたいだから良かったわ。みなさんが証人よ」
それだけ言うと、長い足をさらに長く見せるようなヒールを優雅かつ華麗に履きこなし去っていった。
彼女を貼り付けた笑みで見送りながらも、手に握っていた割り箸がメシメシと悲鳴を上げている。
「……へぇ~。噂は本当だったわけか、紗希が榊田のこと狙ってる、ってのは」
あんなののどこが良いんだか、と朔ちゃんは頭を掻いた。
私はそんな噂聞いたこともないが、みんな知っているようだった。
「紗希が今学期、モデル活動抑えて大学に来てるのは、榊田君を落とすためだって、かなり有名だよ?」
そういえば、モデルさんに駆け出しとは言え女優もやっている彼女にゼミ活動をする時間はなさそうだ。
仕事を抑えてまで、榊田君を落としにかかるとは、本気なのだろう。