私の二人の神様へ



 相手は顔を赤くし、何か喚いている。


 この光景は珍しくもない。


 喚いている言葉は、色気を振りまくな、とか何とかだ。


 榊田君の流し目、はたまた汗を拭う姿はもう色香を惜しげもなく漂わせている。


 それは、女性だけではなく男性にとっても凶器。


 さらに男性だけではなく、あの朔ちゃんでさえ、夏にけだるそうに髪を掻きあげる榊田君に、男が色気振りまいてんじゃないわよっ!と真っ赤になって怒鳴っていた。


 そんな朔ちゃんを見て榊田君は今の比ではないほど気持ち悪そうに口を押さえていた。


 吐き気を催すほどだったようだ。



「俊もよりによって、こんな色気もない暴れ馬を彼女にするなんてな!物好き!」



 うっ……


 今、その言葉はグサリとくる。悪ガキの同級生の千里ちゃんが庇ってくれた。



「小春お姉ちゃんは優しいもん!榊田のお兄ちゃんはそういうところが好きなんだよ」



 でも、千里ちゃん。


 それは私が暴れ馬で色気がないと思っているのかな。


 私のから笑いに気付かず、小学生たちは話を進める。



「まぁ~な。俊は色気は自分にあるから彼女にそんなの求めないか」



「俊言ってたぜ。『水野に色気を求めるなら、その辺の野良猫に求めてる』って!第一……痛っ!」



 いつの間にか、背後霊よろしく榊田君がいた。


 気配なく近づくのはやめて欲しい。


 とてつもなく心臓に悪い。



「俺の許可なく余計なことをペラペラと」



 榊田君は子供が嫌いと言っているわりに良く構う。


 今だって、すごく鬱陶しそうにしてるけど、子供たちが榊田君に群がる。


 というより、飛びかかって、跳ね飛ばされての繰り返し?


 こうして子供たちを日々鍛え上げている榊田君はやっぱり人気者だと思う。



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