私の二人の神様へ
しかし、子供にまで色気がないと言われた。
しかも、少しでも榊田君のために色気をと思ったのに野良猫よりも期待されていないとは。
何だか、私一人だけ慌てて必死になっているみたい。
榊田君にとっては、別に大したことなさそう。
それはそうか。
美女と戯れていた榊田君にとっては。
というか、今日買ったランジェリーで少しは色気が出ても、榊田君にとっては何ら変わりないのかも。
「小春?何だよ?いつもなら俊に蹴りを入れるのに」
悪ガキが私の顔を覗き込むから慌てて顔を上げると榊田君と目が合った。
訝しげに私を見るものだから目を逸らし悪ガキの頭をグリグリと撫でた。
「私は大人なの!いちいち、そんな挑発には乗らないわ。ほら、早く帰りなさい」
子供たちの背中を押しながら、私もそのまま更衣室に入った。
いつもスカートばかりの私が今日は珍しくジーンズ。
何だか、スカートでは防御策としては厳しいと判断して。
やっぱり嫌なんだ、と仁くんがにこやかに笑った。
私の頭の中で。
嫌なら嫌と言えばいいんだぞ、とまた仁くんの声。
それに、でもまた怒らせちゃう……と返す。
あくまで脳内で。
すると、ただでさえ美しい微笑みをさらに深め、仁くんは言うのだ。
そんな男とは別れるんだ、と。
危うく仁くんの誘惑に負けそうだった、私に気付き更衣室のドアを勢い良く開け放ち叫び声をあげた。
「仁くんっ!天使の微笑みで私を惑わさないでぇ~!うがっっ!!」
「……天使の微笑みじゃなくて疫病神の微笑みだ。お前、一人でかなり気味悪いぞ」
勢い良く開けたドアが跳ね返り額を打ち付けた私を榊田君は白い目を向けた。
若干、いやかなり引き気味に。