私の二人の神様へ



「昔から人一倍怖がりで、幽霊とかお化けの話を聞いただけで四方三里に響き渡るほど泣いてたんだもん」



「……なんか、怖いの意味合い違わねぇか?」



「ほらっ!またっ!そ、そうやって屁理屈ばっかり言って!ちっとも真面目になってくれないっ!!そういうのが腹立つのよっ!」



 辞書を思いっきり振り上げる。



「いやいや、どう考えても屁理屈じゃないだろ?至って真面目だ。おい。それを振り下ろすなよ?落ち着け」



「だから、どうしてそんなに冷静なのよ!?私一人だけあたふたして、悲しんで怒って、馬鹿みたいじゃないっ!」



 榊田君が私が持っていた六法を取り上げ本棚に戻す。


 やっぱりどこまでも冷静で、やっぱりそれが腹が立って、表面張力に耐えきれなくなった涙が頬に流れた。



「そ、そのすまし顔が腹立つのよっ!私だけドキドキして本当に馬鹿みたいっ!」



 付き合い始めて八か月間、榊田君の愛情を疑ったことなんてない。


 彼はいつでも私にたくさんの愛情を注いでくれている。


 だけど、一度くらい、そう一度くらい。


 がむしゃらに周りなんて見えないくらい盲目になって欲しい。


 なりふり構わず、私のことを求めて欲しい。


 私だけ、こんなにぐちゃぐちゃになっちゃうなんて不公平だ。



「い、色っぽくないし、つまらない女だって思うなら、何で私と付き合うのよぉ!不釣り合いな彼女なんて持たなければ良かったじゃないぃ~!」



 もう涙だけじゃなく鼻水も出てきて、せっかくの可愛い部屋着を着てても色っぽさ云々の話ではない。


 今の私はぐちゃぐちゃな顔でヒステリーを起こしている。


 もう取り繕うなんて不可能だ。




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