私の二人の神様へ
自信の裏付け
「小春が余裕ぶるのもわかる気がするけどね。これだけ大事にされてたら」
私と麻子ちゃんが改札を抜けると、麻子ちゃんは榊田君を即座に見つけ、ニヤニヤと私を肘で突っついた。
彼女の目線の先を追うと、改札口から少し離れたところに腕を組んで壁に寄りかかっている榊田君。
私が言い返す前に麻子ちゃんは榊田君のところに一人でさっと駆け寄って、一言二言話したら、私に手を大きく振り、闇へと消えて行った。
私は榊田君の元にゆっくり歩みを進める。
今日のことで嫌味の一つか二つぐらい言いたい気分だ。
だが、榊田君はどうも私に昔のことを知られたくないらしい。
「恋多き高校生だったみたいだね。なんか意外!」
いつか、二人で夕食を取っていた時、その日に聞いた彼の話を何気なく言ったことがあった。
本当に考えなしで、夕食中にふと思い出し、笑いながら。
そしたら、彼はひたすらパクパクと食べていたのに箸を止めて、私に真剣な目を向けた。
彼の瞳は、黒く輝いていて、とても綺麗だ。
高貴で神秘的な瞳。
それに射るような眼差しは非常に色っぽい。
そんな目でじっと見つめられると、金縛りにあったように動けなくなる。
すごく、ドキドキする。
そんなこともお構いなしに彼はさらに心臓に悪いことを言う。
「俺が好きになったのはお前だけだ。確かにいい加減だったが、今は違う。やっぱり高校時代のことはマイナスになるか?」
口調はいつもと変わらないはずなのに、眼差しが真剣だったからか、非常に深刻そうに聞こえ、私は慌ててぶんぶん首を横に振った。
何て言ったかは忘れたけど、昔の榊田君は話の中でしか知らないから、それで榊田君を判断したりしない、そんなことを言ったような気がする。
私の知っている榊田君は誰よりも誠実で優しくて、私をすごく大事にしているのはわかっているから。
とにかく、あまりにドキドキしてチンプンカンプンだった。
今回の件を言えば、また彼に嫌な思いをさせる上に、私の心臓に悪いこと言うだろう。
ここは忘れた振りをして、にっこり笑いかけよう。