私の二人の神様へ
「ただいま。お迎えありがとう」
彼の目を下から覗き見る。
本当に宝石のように綺麗だ。
彼の最大の武器は対象者以外も凍らせる毒舌だが、女性を陥落させる最大の武器は射殺しの流し目。
流し目で見られたら、射殺されてしまうぐらい色っぽいことからそう言われている。
仁くんとはまた違った魅力だ。
優しく、温かい眼差しを持つ彼と違う。
「その箱は何だ?」
目敏い。
さすがは食べ物には目がない榊田君。
「シュークリーム。おいしいお店があってね、明日一緒に食べようと思って買って来たの」
榊田君は私から箱を取りしげしげ眺めた。
それが、可愛いと思うのは私の感覚がおかしいのだろうか。
榊田君が食べ物に夢中な姿を眺めるのを心地良く感じるなんて。
見た目にはそうはわからないけど、確実に喜んでいる。
もう少し素直に笑えば良いのにといつも思う。
あの宣戦布告から一週間、紗希さんは榊田君に着実に近づいているようだ。
「悪い。今日も遅くなる。八時には迎えに行けるから夕飯食うなよ」
ゼミ活動が本格化したらしく、榊田君の時間の拘束は厳しくなった。
授業、アルバイト、空手道場の他に、ゼミの発表と来れば私と過ごす時間の捻出は難しい。
今回の発表は学外で行われるもの、かつ卒論の思索段階で、準備に相当な手間がかかるようだ。
夕食は私が作るから無理をすることはない、と言うのに彼は当番制だから、と譲らない。
かと言って、夕食会をやめるつもりもないようだから本当に忙しい。
「わかった。けど、無理しないでね。無理だったらメールしてくれれば良いから」
彼は頷くと、あっという間に消えていった。
これから昼ご飯を食べながら発表の準備なのだろう。
彼は律儀にも私の学部まで足を運び伝えにきた。
何とも誠実だがメールで良いような気がする。