私の二人の神様へ
「結構です。紗希さんって美人っていうだけじゃなくて、インテリなんて非の打ち所がないね」
きっと英語もペラペラ。
あの声で英語をしゃべったら、どんなに綺麗なのだろう?
「おまけに料理もなかなかだったぞ」
彼の言葉に反射的に、えっ、と言葉が漏れた。
「そんなに不思議がることか?モデルでも料理ぐらいするだろ?何だか、カタカナでわけがわからん料理だった」
彼は私の驚きを違う意味で捉えたようだ。
「ち、違くて、榊田君が彼女の手料理食べる機会なんていつあったの?」
「毎回弁当を作ってくるからな、あいつ。ゼミだけで忙しいのにご苦労なことだ」
口調に何の労いも感じないのはいつものことだか、彼は彼女に感心している。
榊田君のために時間を割いて作ってきた料理はさぞおいしいかっただろう。
私は家庭料理だけが得意で、凝った料理はからっきしダメ。
今になって、いきなり不安が芽生えた。
彼女のあの強気な笑みが脳裏にはっきり映し出された。
まさか、榊田君が心変わり?
そう心の中で呟いただけで、それが真実であるかのように身体を支配して芽生えた不安が一気に膨張する。
また、取られてしまうのだろうか?
仁くんみたいに。
仁くんも榊田君も、魅力的な人だ。
世の女性を魅了するだけの容姿器量に恵まれている。
恵まれ過ぎている。
そんな彼らが選ぶのはきっと魅力的な人だ。
佳苗さんに、紗希さん、彼女たちには魅力がある。
彼らが惹かれるだけの魅力が。
私では敵わない。
私のような平凡な人間では。