私の二人の神様へ
被害者はどちら?
「ちょ、ちょっと春ちゃん!大変だよっ!」
四限の授業を終え、そのまま教室で朔ちゃんたちと話していると、亜里沙ちゃんが血相変えて駆け寄ってきた。
ぜぇぜぇと机に手をつき、呼吸を整えている。
「どうしたの?そんなに慌てて」
彼女の背中を擦りながら問う。
「あ、明後日の土曜日、榊田君が紗希の家に行くらしい。二人きりだよ!止めないとマズいよ!」
「何それ?亜里沙、詳しく説明しなさいよ」
私が言葉を発する前に朔ちゃんが凄んで見せた。
「紗希が榊田君を家に招待したら、彼がそれに頷いたらしいの!ゼミのみんなの前だから確かな話!」
「それって、プレゼンの打ち合わせじゃないの?」
二人は一緒にやっているから何にも不思議じゃない。
「ちょっと、小春、二人きりだよ!?何かあったらどうするの!?榊田君だって、小春がいるのに、寄りによって紗希の部屋に行くなんて」
麻子ちゃんの心配そうな声色に私はひらひらと手を振ってみせた。
「何か理由があるんでしょう」
「あんたね……紗希は榊田のこと狙ってんのよ!榊田にしたって小夜の家にも出入りしなくなったのに、紗希の家には行くなんて、何か特別思うところあるからに決まってるでしょ!?何、ボケかましてんのよ!」
一年の頃は小夜ちゃんの家でチェスをしていた榊田君も、私に告白した後は気持ちを疑われないよう小夜ちゃんの家に出入りしなくなったと、小夜ちゃんが少し寂しそうに言っていた。
もちろん、二人きりでと言う意味で、他のメンバーがいれば革張りのソファーを占領している。
小夜ちゃんの家は、学生の一人暮らしなのにマンション住まいで、革張りのソファーがあるリビングに、寝室、広いキッチンがあって、五人のたまり場になっている。
小夜ちゃんの家に泊まった後に、自分のアパートに戻ると綺麗にしているのに何故か、ため息が出てしまう。
それは、ともかく今は榊田君だ。