私の二人の神様へ
とりあえず、ご飯をあげないと話してくれなさそうだから、朝食の残り物をテーブルの上に置いた。
私と朔ちゃんが急かすが、
「飯の最中に、俺におぞましい体験を思い出させるな」
と、私たちを一度睨みつけると、あとは持ち前のマイペースさで食べ物しか目に見えてない様子。
苛立ちながら彼が食べ終わるのを結局待つハメになった。
そして、満足した榊田君はようやく重た過ぎる口を開いた。
「俺が熱心にパソコンに向かってるっていうのに小宮山のやつ、背後から抱きついて来たんだ」
「そんなの、あんたにとっては日常茶飯事じゃない?」
「いや、俺も初めての経験だ。なんせ、バスタオル一枚だったからな」
とんでもないことを、あっさりと榊田君は言ってのけた。
私と朔ちゃんは運悪く、紅茶を飲んでいて二人して激しくむせ返った。
榊田君はそれに満足したように大きく頷き、
「さすがの俺も驚きのあまり数秒間停止した。その隙にあいつは俺の膝の上にのしかかって来たから慌てて、バウムクーヘンを抱えて逃げ出してきた」
「げっほ……。さ、榊田君。嘘吐いてるわね?というより、面倒くさくて端折ってるでしょ?慌てて逃げ帰るのに、バウムクーヘンと一緒に逃げてくる人間がどこにいるのよ?」
私がハンカチで口を拭いながら凄んで見せると、彼は肩をすくめて見せた。
「俺が唖然としている中、極悪人のような笑みを浮かべた顔を近づけてきてドスのきいた声で『誰にも言わないでおいてやるから安心しな』って脅してきたんだ」
「つまり、彼女は魅力的な笑みを浮かべて囁くように『誰にも言わないわ、安心して』って誘ってきたわけね」
彼の言葉を正確に訳す。
「だから俺は言ったんだ。『お前を痴女として訴えても構わないんだぞ』って」
「…………」
「…………」