私の二人の神様へ
もう戻れない
「な、何で、俊ばっかり、良い思いをするんだ!おかしいだろ!?何で、俺じゃないんだ!俺に据え膳プリーズ!!」
次の週、小夜ちゃんの家に集まった時に朔ちゃんが事の真相を嬉々として語ったら、広君は大層憤慨した。
「お前、他人事だと思って勝手なこと言いやがって」
榊田君は忌々しげに広君を見つつ、最後のバウムクーヘンを口に放り込んだ。
ふわふわの白いラグの上に、ガラス張りのテーブルと黒い革張りのソファー。
まさに、モデルルームのような空間で、グルグル屋のバウムクーヘンを食べられるのは至高の幸せ。
「何だ、その不愉快そうな顔は!?代われるものなら代わりたかったさっ!」
伏せって泣いている広君の背中を擦る。
「榊田君だから仕方ないよ。それに、広君もモテるし!」
私が精一杯励ましている中、榊田君はというと、
「や、やめて!!私に近づかないで!ううん!私のお皿に近づかないで!!」
魔の手を、小夜ちゃんに、いや、小夜ちゃんのお皿に伸ばしていた。
なるほど、小夜ちゃんが、さっきあれほど榊田君の隣を嫌がり、一番離れた位置に腰下ろしたのはこの手を恐れてだったのか。
榊田君は、さらに忌々しげに顔を歪め、ソファーに寝転がった。
彼は仁くんの家でもソファーを一人で占領して寝る。
よほど、革張りのソファーが好きなようだ。
広君は私の両手を掴み、おいおいひとしきり泣くと、フォークで一口バウムクーヘンを私の前に差し出してきた。
広君は優しいな、とパクリと食べる。
「俊、羨ましいだろ?俺と小春ちゃんは相思相愛なんだ!別に紗希ちゃんのことなんて羨ましくないし!」
広君は鼻息荒く、榊田君を見た。
むしろ、榊田君が羨ましがっているのはバウムクーヘンを貰えた私だろう。