私の二人の神様へ
『本当だよ。私が仁くんに嘘吐くはすがないでしょ?』
『そうか、小春は電話越しで満足できるんだな。俺は小春に会いたくて仕方がないのに』
彼のわざとらしく拗ねた声に、私は困ってしまう。
仁くんの言っているのは、二人きりで会えていないということ。
そう、五月以来今まで二人きりで会ったことはない。
『だって』
私の言葉を仁くんは遮る。
『佳苗に悪い、って続くんだろ?むしろ、佳苗は小春に会えなくて俺がイライラしてるから『早く小春さんに会ってよ』って怒ってるくらいだ』
佳苗さんは寛大だな。
私と仁くんの関係を認めてくれている。
仁くんの相手が佳苗さんで良かった。
『本当に?二人だけで会える?』
『もちろんだ。来週の金曜日はどうだ?榊田を連れて来たりしたら怒るからな』
きっと、今、仁くんの眉は吊り上がってるんだろうな。
彼の表情が手に取るようにわかるのは、時を積み重ねてきた幼馴染の特権だ。
『仁くんの会社の近くで待ってるから。少しでもたくさんお話したいから良いでしょ?』
彼が断れないように、そう言うと、仁くんは笑った。
『わかった。少しだけでも声が聞けて、良かった』
『私も』
電話を切ると、三分五十秒と表示される。
カップラーメンが少しくらい伸びても、彼との電話の後ではどんな高級料理よりもおいしく感じるだろう。
仁くんとちょっと話しただけで、ふわふわと気分が高揚する。
この感覚はきっと私の中で永遠に続くものだ。
仁くんが好きな気持ちと同じで。