私の二人の神様へ
「あ、あ、あんたは!どうしてそう無神経なの!?榊田!あんた、小春を甘やかしすぎ!!」
怒りが脳天を刺激して、朔ちゃんは肩を振るわせた。
「仁くんは自慢の幼馴染だし、ずっと好きだもん。それを隠すなんて私にはできない。誰よりも格好良い!」
きっぱり言うと、朔ちゃんは、深いため息を吐いた。
「榊田。別の女にしな。この子の頭は一生治らない重大病に冒されてる」
「お前に関係ないだろ?瀬戸。チェスするぞ」
彼はソファーから身を起こした。
「じゃあ、私たちはゲームしよ!」
にっこり朔ちゃんと広君に笑いかける。
もう誰も何も言わなかった。
「しかし、朔は上達しないな。テニスもゴルフも水泳も、全部ビリ」
秋が深まり、木枯らしが吹く中、落ち葉を踏みしめ私と広君は歩いていた。
朔ちゃんは運動神経が抜群なのに、ゲームのスポーツはまったくダメ。
いつものごとく、私と広君にボコボコにやられて頭を掻き毟って一人で練習する。
だから、私と広君は飲み物と夕食の材料を買いに出掛けるのも恒例となった。
広君は公園を指差した。
寄って行こう、という合図。
何か話があるのだろう。
ブランコの脇のベンチに買い物袋を置く。
ブランコというのは、この歳になると一人では乗りにくい。
だから、こういう貴重な瞬間を逃したくない。
「もしかして、俊のこと振ろうとしてない?」
私は、曖昧に微笑んで、地面を蹴った。
「どうして、わかったの?」
「さっき、わざとらしかったから。俊にしたって、あれだけ蔑ろにされたら絶対何か言わないと気が済まない性格だしさ」
ブランコを思いっきり漕ぐと、空に吸い込まれていくような感覚になる。
もう真っ暗で、星が出てる。
こんな星が見えないのも、東京で三年近く過ごせば当たり前になってしまう。
それが何だか悲しい。