私の二人の神様へ
「まだ、何かあるのか?」
彼はうんざりしたようにため息を吐きながらも、私を見据えた。
「榊田君のこと好きだよ。だけど」
だけど、彼自身が好きなのかわからない。
「私のことを好きな榊田君が好きなのか、榊田君自身のことが好きなのかわからないの」
彼が私を好きだと言ってくれなかったら彼に恋をしなかった。
今は、どうなのだろう?
こんな風に過ごしていたら、彼が私のことを好きじゃなくても彼に恋していた?
仁くんに恋していたように思われていなくても恋していたのだろうか?
「……水野。俺の話聞いてたか?ミジンコみたいな脳みそでくだらないこと考えてんな!」
彼は口を引きつらせながら、私の頬を上下左右に引っ張った。
私は彼の手首を掴みつつ、顔を思いっきり左右に振って何とか引き剥がした。
「さっきは猫の額だったわ!格下げ!?と、とにかく、私はもし榊田君が私を好きじゃなかったら好きになっていたのかわからないの!」
「お前は本当にパラレルワールドが好きだな。少女マンガの見過ぎだ。仁の結婚式の時と言い、今回と言い」
彼は、付き合いきれないと肩を下げ、またため息。
「パラレルワールド何それ!?私は真剣に……」
そこで榊田君に遮られた。
「水野のことが好きな俺と俺自身は同じだろ。この世界に水野のことが好きじゃない俺は存在しない。仮定の話してんな、馬鹿が」
本当に彼は臆面もなく、こんなことを良く平気で言えるな。
顔が赤くなっている自覚がある。
榊田君が私の頬を引っ張ったせいだ。
身体が熱いのは布団と部屋が暖まってきたせいだ。
そういうことにしておこう。