私の二人の神様へ
「仁くんたちの前で、そんなこと言わなかったよね?」
「ああ。水野と違って誰も俺に感想を求めなかったから」
それなら良かった。
仁くんと喧嘩でもしたらと、代役を頼みながらも不安に思っていたのだ。
「おい。それより勉強だ。最近、テストと風邪でまともに勉強が進んでないだろう?」
そう一月は大学の試験だったし、その後、私と榊田君はインフルエンザにかかり試験勉強が滞った。
春休みを終えたら四年生。
もう五月の試験まで時間がない。
朔ちゃんたちも冬頃から就活で動き出している。
顔を合わせれば、いや、メールや電話でも泣き言を言っている。
榊田君以外は。
彼は何だか知らないが余裕綽々。
榊田君が慌てたり泣き言を言ったら怖いけど。
「私もマズいと思ってる。でも、榊田君はそろそろ自分の就活を気にかけて。たまに教えてくれるとありがたいけど」
もう、一通り勉強を終え、後は過去問と知識の穴を埋める作業だから、一人でどうにでも出来る。
「俺はすでに候補を絞ってるから平気だ。お前の就職浪人のほうが俺は恐ろしい」
榊田君はまったく就職に危機感を抱いてないようだ。
私が何を言っても仕方がない。
それに榊田君が就活に失敗するとはとても思えない。
「これから過去問でどれだけ点数を取れるかだよね」
「今の時点で合格最低点取れ。今年は倍率上がるぞ」
そう言って、彼は本棚から過去問を一冊取り出した。
今は自分の試験を考えよう。
榊田君の就職を私が心配するだけ無駄だ。
彼はさらりと駆け抜けてしまう。
近々、仁くんから電話が来るだろう。
あかりに会いに来い、と。
それまでに少しでも勉強を進めておかなければ。
私は頬を二回叩いて、問題と向き合った。