私の二人の神様へ
泣きたくなるのは
「佳苗さん!おめでとうございます。私にできることなら何でも言ってくださいね」
夏休みになるとすぐに、仁くんの家にお呼ばれした。
「あ、ありがとうございます!小春さんには、いつも助けられてばっかりで」
きっと、料理のことだろう。
私は、佳苗さんに料理を教えているのだ。
仁くんが好きなものを中心に。
私が奥さんになって、彼に作ってあげたかったけど、間接的にでも彼が喜ぶ姿を見たかった。
少し迫り出してきた佳苗さんのお腹を、撫でる。
この子に会える日が待ち遠しい。
だけど、その一方で私は悲しんでいる。
泣きたいのに、こうして笑っている。
泣く必要なんてどこにもないのに。
だって、仁くんは相変わらず私を甘やかしてくれる。
「赤ちゃんが生まれてきたら、仁くんは赤ちゃんに夢中になって、私に構ってくれなくなったりしない?」
答えなんかわかってる。
でも、こうして甘えたくなるのだ。
案の定、彼は心外とでも言うように、私を小突いた。
「馬鹿言うな。小春の可愛さが目減りするわけでもないのに、どうしてそんなことができるんだ?」
小突いた頭を、くしゃくしゃと撫でてくれる。
彼の手は変わらずに優しく、温かい。
「おい。俺は腹が減った」
そう、今日お呼ばれしたのは私だけではなく榊田君もなのだ。
せっかく、甘えている最中に横槍が入り、唇を尖らせる。
「小春。こんなやつは気にしなくて良い。不愉快な置物があると思えば。それより、最近はどうなんだ?小春がどう過ごしているのか教えてくれ」
仁くんは手と同じく優しい眼差しと、声を私に向けた。
彼の中で、私がちっぽけな存在ではないことの証に思える。
きっと、彼は佳苗さんと生まれてくる赤ちゃんと同じくらい、私のことも愛している。
私が求めていたものとは違った愛だとしても。