私の二人の神様へ
「小春。こいつはこの間も、あかりに目を向けずにひたすら料理を食い散らかしてたんだ。父性本能も何もあったもんじゃない」
仁くんは私の肩に手を置き、榊田君に呆れた視線を向けた。
「俺は父親じゃない。そんなの当然だ。それに、大人六人がベビーベッドを取り囲んでた状況で、どうやって目を向けろって言うんだよ」
やっぱり、榊田君はおせんべいを食べながら、どうでもよさそうに返した。
「こんなに可愛いのに。可愛いとは感じないわけ?」
そう尋ねると、最後の一口のおせんべいを放り込み、ボリボリ音をさせながら、あかりちゃんを覗き込み、その頬と腹を突っついた。
「文武区茶釜を思い出すな」
「榊田君!!」
「うるさい。あかりが目を覚ますぞ」
そう言って今度はみかんに手を伸ばした。
私はそれから始終、あかりちゃんを見ていた。
そして、仁くんは私とあかりちゃんを交互に見つめながら優しい微笑を浮かべている。
変わらず、私の頭を撫でてくれるし、オレンジジュースをお腹いっぱいに勧めてくれる。
あかりちゃんが生まれても何も変わらず、淡く優しい彼。
心地良さを感じる。
それから数時間して、チョコの包装を佳苗さんとして、仁くんと榊田君に渡した。
「これは、俺のために作ってくれたんだよな?何で榊田にまで?」
「仁と俺は同列かよ」
渡した瞬間、二人は同じ顔をした。
つまりは微妙な顔を。
「二人のために作ったんだよ。しかも、佳苗さんのはじめての手作りチョコよ!貴重でしょ?」
「小春さんと作ったから、味は保障する。形はご愛嬌で!」
やっぱり、二人して眉間に皺を寄せて不本意そうな顔。
「日頃お世話になっている仁くんと榊田君への感謝の気持ちを込めて作ったんだよ?」
そう言うと、仁くんはいつも通りの笑みを浮かべた。