私の二人の神様へ
「おい。お前、普通スカートで回し蹴りをやるか?」
彼はさらりと避け、手でストップの合図を出した。
「榊田君!!あ、あなたはどうしてそんなにデリカシーがないの!?」
「俺は事実を言ったまでだ」
「事実なら何でも言って良いとでも思ってるの!?特に女性の容姿をう、熟れたト……」
泣いて酸欠になったばかりなのに、怒鳴ったり地獄蹴りやらで酸欠になり、ふらふらよろけた。
そしたら、ふわりと抱きしめられ宥めるように背中を軽く叩かれた、もちろん榊田君に。
「とりあえず、帰って飯の仕度をするぞ。何が食いたい?何でも作ってやる」
私から身体を離し、空き缶を拾って歩き出す。
私は慌てて追いかけ、榊田君の手を掴んだ。
「え、えっと。ハンバーグが良い!チーズが上に乗っかったの!」
何だか、良いようにあしらわれた感じがするけど、凍りついた私たちの手がお互いの体温でじんわりと温かくなってきて、心もポカポカで、ふわふわで。
びゅーびゅー吹く北風もへっちゃらだ。
だから良いや。
そんな風に思った。
仁くんのマンションの前を再び通る。
この恋を大事にしよう。
この手を離したりしない。
春はもうすぐそこだ。
【完】