私の二人の神様へ
第二章
幸い
「み、み、水野!お前は最高だ!あまりのセンスに脱帽だ!」
「…………」
「しゃ、写真!これは撮って置かないと!」
恥も外聞もなく転げ回る自分の彼氏を私は虚ろな目で見つめた。
そんな私の肩を仁くんががっしり掴む。
「小春。こんな男とは即刻別れろ。小春の贈り物を笑うようなクソガキとは!」
「熊親父が喋ってやがる!仁!お前には負ける!お、俺にはその着ぐるみは着こなせない!」
私の彼氏こと、榊田君は絨毯をひとしきり転げまわると、今度は仁くんを指差し笑い始める。
これが、本当に私の彼氏なのだろうか?
あのめったに笑わない無愛想な顔に、笑い過ぎで目に涙が溜まっている。
その顔はマヌケ顔。
目を疑いたくなる光景だ。
「……佳苗さん。そんなにおかしいですか?」
「いいえ!すごく似合ってると思います。それに、私とあかりの分までありがとうございます!」
その笑顔から、本当に喜んでいることがわかりほっとした。
そうだ、芸術のわからない榊田君なんて無視すれば良いのだ。
なんて、馬鹿な私!
「良かった!榊田君があまりに笑うから、変だったのかと思って。所詮、榊田君ですもんね」
「おい。何が所詮だ。仮にもお前の彼氏に失礼な。お前のセンスの良さを褒めただろ?熊親父、似合ってるぞ。ずっとそれ着てろ。…そうだ、写真、写真」
私のカバンに手をのばした榊田君から、さっとバックを取る仁くん。
その仁くんは今、熊の部屋着を着ている。
熊顔のフードが何とも可愛らしくて、苦労して見つけたかいがあったと満足していたのに、冒頭の榊田君の馬鹿笑い。