私の二人の神様へ
「ガキ。小春の持ち物に触れるな。馬鹿がうつる。そもそもお前が何でここにいる。出て行け」
「水野が行きたいところに連れて来たまでだ。それに、熊子も俺に会いたがってると思ってな」
そう言って、おそろいの熊さんの部屋着を着ている佳苗さんから、同じくおそろいの部屋着を着ているあかりちゃんを奪う榊田君。
「おい。熊子。お前は可愛いんだから、そのまま真っ直ぐ育て。決して、熊親父みたいなひん曲がった性格になるなよ」
あかりちゃんはペタペタ榊田君の頬に触れる。
それを、優しい目で見る榊田君は、さっきとは別の意味で目を疑う。
こんな表情を、それこそ父親であるかのような表情は仁くんと重なる。
最初の頃は、あかりちゃんに興味がなかったのに実に奇妙。
でも、良い兆候には変わりない。
そして、榊田君に抱っこされているあかりちゃんを見ている仁くんにチラリと目を向ける。
あかりちゃんに向けるその表情と、私に向ける表情は同じ。
やっぱり、私が隣にいることはできなかったと痛感する。
その優しく温かい表情は、大好きで愛しいけど。
「佳苗も、こんなやつにあかりを渡すな。あかりが無愛想になったらどうするんだ」
佳苗さんに向けるその視線と表情を私は求めていた。
ずっと、ずっとそれが欲しかった。
でも、もう叶うことはない。
「小春?」
ぼ~っとしている私を仁くんは覗き込むから、慌てて後ずさる。
「あっ。ごめん。何でもない」
「こんなクソガキのことなんか気にするな。プレゼントありがとう」
「あ、う、うん!良かった!」
取り繕うように話を合わせるけど、何故だか仁くんにはわかってしまう。
気づいてなんか欲しくないのに。
それでも気づいて欲しくて、言葉が欲しくて。
そんなことさえ、彼はお見通しで。