私の二人の神様へ
変化
「それ、何?」
いつも通り、榊田君の家に行き、夕食の買い物に出かけようとした時。
手ぶらがモットーの榊田君が紙袋を持っていた。
「Yシャツ。買い物ついでにクリーニングに出そうかと思って」
彼が持った紙袋を引っ張った。
「私が洗っておくよ。アイロン、うちにあるし」
わざわざお金を払わなくても、これぐらいなら私が、と思って言ったのに今度は榊田君が強く紙袋を引っ張った。
「必要ない」
「平気だよ?ちゃんとアイロンかけられるもん」
「そういう問題じゃない。お前は俺の彼女であって家政婦じゃないだろ?そんなことやる必要はない」
彼は紙袋をぶらぶらさせて部屋のドアを開けた。
ストレートな愛の言葉なのか、間接的な愛の言葉なのかわからないけど、心臓がトクトクと音を立て、顔を両手で挟み込んだ。
「おい。のろのろしてんな。行くぞ」
玄関から呼ばれて、慌てて彼を追いかけた。
鍵を閉め、ポケットに鍵を仕舞い込んだのを見計らい、彼の手を掴む。
そうすると、手をしっかりと握ってくれる。
見た目と反して彼の手は暖かい。
冷え性かと思ったら、ほんわかと温かい優しい手。
六月は暖かくなったとはいえ、雨が降ると気温はがくりと下がる。
今日は雨が降ってないから私の手もそう冷たくないけど、彼と手を繋いでいると自分の手の冷たさがわかる。
それも、こうやって手を繋いでいれば同じ体温になるけど。
こうして、手を握ってくれると、ふわふわと幸せな気分になってどうしてもニヤけてしまう。
そんな私を呆れて見ている榊田君。
これが恋人になって、変わったこと一つ目だ。