浅葱色の忍
慶喜の腕から手を離し

胸ぐらを両手で掴む


「……」


言いたいことは、山ほどある


慶喜の輿がわからないように
わざわざ同じ物を3つ用意したのに

輿から出てきたから、狙われて
恵が庇ったんだろう

今だって、狙われているかもしれへん

なのに……


グダグダしやがって!



慶喜は、主なのに
恵を逝かせることを拒んだ



俺達は、敵からの怪我で死んではいけない



だから…



最初に主従関係を結ぶ時



主と忍で約束する




それを破ったことにも、腹が立つ




手に力が入る




トンッ





勇に肩を叩かれた



「慶喜様 輿にお戻り下さい
我々は、任務中です
今は、悲しみを堪えていただきたい
慶喜様も任務がお有りでしょう」



慶喜の着物から手を離した


申し訳なさそうに、輿に乗る慶喜に
少しため息漏らす



トンッ

勇の手が再び肩に乗り


見上げると、にこりと微笑む勇


思わず微笑み返した



後で胸借りよ

いっぱい泣かせて貰お



「俺も護衛に回ります」


人を乗せていない輿に、着物と刀を乗せていて良かった

忍装束の上から着物を着て、刀を下げる

顔を隠していた布をとると



恵を誰かに託したのだろう梅沢が戻り
出発する




「何者だと思う?」


梅沢に問いかける


「さあな」





俺が捕まえたのは、そこら辺から集めたような浪士だった

ただ、恵の太刀筋を見た限り


そこそこの腕前

しかも、俺達の包囲網を突破した



「俺の采配が悪かった
お前をそばに置くべきだった」


「ぷっ」


思わず笑ってしまった

梅沢が、俺を買ってくれてたなんて



「なぜ笑う?」


「雨降りそうだなって」


「は?」



少し間抜けな顔した梅沢に、ニカッと笑う

後ろの新選組に視線をやると

安心するほどの殺気

ここは任せて良さそうやな



「梅沢」


「駄目だぞ」



無駄に勘の良い梅沢に、またニカッと笑う



「まだ近くに居るはずだろ」


「だから…!」


「捕まえてくる!」


「烝!!!」




梅沢に捕まえられないように振り切り

屋根上へ



俺だったら……



次の角を曲がる時を狙う


輿が新選組の死角に入るときやな




刀を抜き




見つからないように、少し遠回りして
角の真上に行く


お目当ての人物を見つけると


応戦してきた



こんな時に、男だったらと思うのは
やはり、力の差



得意の長巻を持って来なかったが
俺かて、新選組の一員


刀で負けるわけにはいかない!











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