浅葱色の忍

近藤勇 ②

烝の読みが当たり

無事に慶喜様を守れたが
烝は、戦いに我を忘れたように
刀を振り、慶喜様のそばから離れなかった


安全が確認されても、慶喜様を輿から出すまいとしていた


烝を抑えろと言われて
行くと、梅沢様が烝に何かを刺した


グタリと烝が意識を手放した



ついてくるように言われて
布団に寝かされた烝を挟み
慶喜様と向かい合う


何度目だろうか


「烝をこんなふうにしたのは俺だ」


前にもそんな台詞を聞いた


「子を亡くし、泣いているのだと…
俺は、どうしていいかわからず…逃げた
いつの間にか、忍に戻っていて
暴走するようになった
危険な事ばかりして…死にたがっている
そんなふうに見えた
烝を止めるため、薬を使い意識を奪った
〝闇に落ちただけ〟烝は、言っていたが
本当に死にたがっていた
なぜ、忍なんだ!! 近藤!!
お前の妻として、普通の女にすればいい!
忍なんかでいる必要はない!!」




慶喜様は、今も

今でも、烝を愛している


その想いが、伝わってしまった




「慶喜…」



目覚めたが、薬で体が動かないらしい烝が
目線を慶喜様に向けた


「妻なんか… 寂しくていやや…
そばに居て欲しい…
一緒に… 悲しんで欲しい…
喜んで欲しい…
そばにおれるんやったら…
忍の方がずっと続く関係やん
頑張ったら、誉めて貰えるねん
せやから、笑えるようになってん
たくさんおる妻よりも
唯一無二の忍がええねん
今度は、もう離れんて決めてん…
でも…
慶喜と勇が、同時に襲われたら
俺は、慶喜を助けるから
勇は…守ると土方さんが怒るねん
多分…あの人慶喜と同じ
トドメ刺すのが、嫌なんやで!ふふふっ」


「烝は、怪我しないのにな」


「うん…」



慶喜様に頭を撫でられ、また目を閉じた



「悲しみをともに…したのか?」



「ええ 一緒に泣いて、供養をしました
烝が女だと、土方に教えようと話たのですが、使い方を変えられるのが嫌だと…
実は、私も
烝が新選組を追放と言われたら、なんて
思ったら、離れたくなくて…あはは」


「お前が、局長なのだろう?
ふふふっ おかしな奴だ」



「局長らしいことをすると
皆に心配されるような局長ですよ」



「お前のような男がそばに欲しいものだ
烝は、果報者だな」


「それは、私ですよ
本人は、全く気づいておりませんが
慶喜様に大切にされていたからこそ
烝は、強い そして、人情厚く
優しい心を持っている
個性の強い幹部の心を癒し
新選組に無くてはならない存在です」



「今、わかったよ
烝には、綺麗な着物などの贈り物より
お前が必要だという言葉を贈るべきだった」


「そうですね
烝が、喜ぶ姿が浮かびます」


「やはり… お前には、適わぬな
目覚めたら連れて帰れ、挨拶はいい」









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