浅葱色の忍
「俺に……烝華を手放せと言うのか?」


「いえ、側室という立場から、忍になります
そばにいることは、変わりません」


「変わるだろ!!
烝華に触れることも叶わぬのなら
このまま側室でいてもらう!
そうすれば今まで通りだ!
俺は、烝華を気に入り側室にした!
其方らが、どんなに偽ろうとも
俺の気持ちは、変わっておらん!!!
烝華を手放すものか!!!」


「慶喜様 しばらくは、城で安静を言われて
いたのに、アイツ大人しくしなくて…
近くの寺の大屋根から…落ちたんです」


平岡は、目に涙を浮かべ


「大した怪我はなかったけど…
死んでいたかもしれません
目覚めてからも、無茶して起きて
今は、奥の女中から無理やり寝かされてる
まずは、明日
梅沢さんと誤解だと話してきます
その上で、烝華のやりたいように
させてもらえませんか?」


「わかった……」




梅沢 平岡 烝華の両親が頭を下げた




そして





「慶喜様 あの子は、女ですが…
里を出る時、忍として出ました
私達の里では、主と主従関係を結ぶまで
本当の名を口にすることは出来ません
ですから……
あの子は〝烝華〟という名ではありません」


「本当の名は… なんという?」


「掟、故言えません
ただ、慶喜様のお気持ちが本物で
あの子が、慶喜様と本当に夫婦でいたいと
そう、願った場合は、忍にならないよう
仮の名を捨てます
どちらか一方しか選べませんから
あの子が選ぶでしょう…」


「先ほど忍として雇って下さいと
お願いしたのは、まず烝華ではなく
本当の名を呼べば、あの子の気持ちも
仕事ではなくなるやもと思い
口にしましたが
慶喜様が、あの子を想うお気持ちが大きく
娘が幸せ者であると確信しました」


「あの子、肝心なことは、言わないし
色恋は、さっぱりで…
思い込みで悪い方に向かって考えてしまう
昔からヘンな癖がありますから
厄介でしょうが、よろしくお願いします」







ご両親が、烝華に会わずに帰って行った




翌日



梅沢と平岡が城へ

入れ替わるように

阿部が屋敷に来た





「烝華は、人を惹きつけ
人に好かれる能力を持っております
普段は、ギスギスした大奥の女らが
産後から安静にしない烝華の為に…
協力し、助け合って面倒をみている
慶喜様は…
烝華をどうなさるか
悩んでおられるのでしょう?
あんな女は、そうそういない
それに、才を隠しておりますが
かなり優秀な忍であることは、わかる
慶喜様の為に、悩み、苦しむほど
烝華は、慶喜様を好いている
慶喜様とて、好いているのでしょう?
だったら、答えは決まっているでしょう
後は、慶喜様の行動次第ですよ」




「あぁ 手放す気は、ない」














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