浅葱色の忍

烝の喪失感

口やかましい奥の女中らに見張られ

部屋にひとりになることも出来ず

ひたすらゴロゴロと寝ている

隙を見て少しでも起き上がるものなら





「お身体に障ります
どうか、お医者殿がもういいと言うまで
きっちりと御安静に!!」






昼過ぎに、梅沢と平岡が来た

人払いをしてくれて

やっと起き上がることが出来た




「はぁ あいつら、お前より怖えぞ」



平岡に向かって言うと
頬をひくつかせていたが
その顔は、すぐにキリリと元に戻る


面倒な話を始める時の顔だ



梅沢の方に視線をやれば

こちらもキリリ




「烝華… お前が烝華という名でないこと
婚礼の前に、俺達は知っていた
ご両親に、この婚礼が任務だと
嘘をつくように頼まれた
しかし、慶喜様の気持ちに偽りなどない」


「そんなこと言いに来たのか?」


「そっそんなことって!お前なぁ!!!」


「婚礼が嘘だろうが、任務じゃなかろうが
今は、どうでもいい」


「烝華!!!」


「慶喜様は、お前の事すっげえ心配してんだぞ!!御子の事も、残念だって…」


「あのさ… そういうの本当いいから」


「この前も言ってたけど
そういうのってなんだよ!!!」




期待させるようなことや
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