浅葱色の忍

慶喜の夢

「御不満ですか?」


烝のことが気になり、梅沢に時々報告を
頼んでいる

烝の働きが素晴らしいということは
嬉しいことだが


烝が大名らの教育まで始めて


見掛けるたびに、ムスッとしているのだ



「不満だ!」



「忍なんて、楽しい仕事ではありませんよ
それに、普段は篠塚として恐れられてます」



「烝が笑ってくれると思ったのに……」




そう呟けば



クスクスと笑い




「平岡君も同じことを言ってましたね
あ、でも…昨日は、2人で出掛けたようで
平岡君がニヤニヤしていたので
理由を聞いたら、久しぶりに烝が笑ったと
言ってましたよ」




「……」




「あれ?お気に障りました?」




ますます、ムッとする



自由に烝に会えるわけでもない俺の立場



平岡を羨んでも仕方が無い




「慶喜様… 後悔しているのですか?
烝を手放したこと」


「手放したつもりはない!!
忍にしてやっただけだ!!」


「さようでございますか」



クスクス笑う梅沢は、意地悪だ



「何か手だてがあるなら指南しろ!」




「そうですね…
御子の名を聞いたらどうです?」


「……」



「後ほど、散歩に誘っておきますね」












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