イケメン兄の甘い毒にやられてます
「…そんな顔しないで、夕陽」
「…ごめんなさい…喜ばしいことなのに、すなおに笑えなくて」

涙で圭吾の顔が歪んでいく。

夕陽は必死に涙をこらえる。

「…全然会えなくなる訳じゃないよ?時間を見つけては、必ず夕陽に、会いに行く。俺だって、夕陽に、会えなくなるのは辛いから」

「…圭吾さんが頑張るなら、私も頑張ります。頑張って、看護師になります」

溢れてしまった涙は、もう止まらない。でも、夕陽は何とか笑って見せる。

圭吾は夕陽の手を取ると、片方の手で、ポケットから何かを取り出した。

「…今日は、神様の前で、一生の愛を誓いに来たんだ。

…夕陽、夕陽が一人前の看護師になったら、俺と結婚してください」

「…圭吾、さん」

「…どんなに離れても、会えない時間が多くなっても、俺の気持ちは変わらないから。夕陽だけを愛するって誓う。夕陽はまだ高校生だし、結婚なんて、早い気もしたけど、離れてしまうからこそ、誓っておきたかったんだ。どうかな?」

「…」

ポロポロと、涙が落ちていく夕陽。

圭吾は優しく涙を拭いながら、夕陽の返事を静かに待つ。

「…私」
「…うん」

「…私、も、圭吾さんが、大好きです。…ううん、愛してます。一人前になったら、私をでしたお嫁さんに、して。ください」

しゃくりあげながら、何とか言葉を紡ぎだした夕陽。

圭吾は夕陽に指輪をはめると、誓いのキスをした。

『婚約』した二人。

形だけでしかないけれど、二人の気持ちは、より一層深くなったのは確かだった。

…その後しばらくそこで過ごした二人は、再び車に乗ると、寮へ向かい、二人は、そこで別れた。
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