イケメン兄の甘い毒にやられてます
「…夕陽と、余程仲が良いんだね」
「…看護学校からの付き合いなんで」

二人、かおを見つめあい、優はため息をつくと、一礼して歩き出す。そして、圭吾の横を通りすぎた。

「…夕陽のお守りはもういいよ」

圭吾の言葉に、足を止めた優。

怪訝な顔で圭吾を見る。

「…夕陽には、俺がいるから」
「…貴方は、夕陽の『お兄さん』ですよね?彼氏じゃない」

「…どうだろうね?」

意味深な笑みを浮かべ、圭吾は夕陽の部屋へと足を進め出す。が、優に止められた。

「…どういう意味ですか?」
「…俺と夕陽は兄妹だけど、血の繋がりはない」

圭吾の言葉に、目を見開いた優。

「…両親も認めてる仲だと言えば、わかる?」
「…それって」

「…夕陽は、俺の大事な人だから、これ以上むやみに近づかないで。それじゃあ…」

圭吾の口調はとても穏やかで、余裕すら感じられる。

だが、心の中は、穏やかじゃなかった。

自分がいない間に、夕陽の傍に居たのが優だと言うことは、病院での二人を見ていたらすぐに分かった。

優を信頼しきってる夕陽の顔。

仕事のためとはいえ、夕陽の傍に居られなかった自分を責めたい気持ちだった。

優は優で、何とも言えない顔で、圭吾を見ていた。

圭吾は夕陽の部屋のインターホンを鳴らす、と、間もなくして開いたドア。

圭吾を見つめ、突然怒り出した夕陽だったが、圭吾に引き寄せ抱き締められると、わんわん泣き出してしがみついた。

その光景が待ちに待った人が来たことを思い知らされた優。

見ているのも苦しくなって、足早にその場を去っていった。
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