イケメン兄の甘い毒にやられてます
…優は居なくなっていたものだと思っていた夕陽は、なりふり構わず圭吾にしがみついて、落ち着いた頃には、目は真っ赤になり、少し腫れていた。

そんな夕陽を見て、眉を下げて笑った圭吾は夕陽をようやく部屋の中へと連れていくと、冷凍庫から氷をだし、氷水にタオルを浸し、夕陽の目に優しく当てた。

「…冷たいです、圭吾さん」
「…このまま放っておいたら明日大変なことになるよ?」

「…でも」
「…仕事、ずる休みする?」

圭吾の言葉に、首をふった夕陽。それを見て、圭吾はまた少し笑った。

「…圭吾さん」
「…ん?」

「…どうして帰国したこと連絡してくれなかったんですか?」

「…驚かせたかったんだよ」

「…どうして、大学病院じゃなくて、分院で働くことに?圭吾さんは凄い内科医になったんじゃないんですか?誰もが認める、最高の内科医に」

「…」

その問いに、返事はなく、夕陽は、タオルを外すと、圭吾を見た。

「…圭吾さん?」
「…だったから」

「…?」
「…離ればなれだったから」

「…圭吾、さん」
「…夕陽が寮に入って離ればなれだって、しかも、俺の仕事でもっと離ればなれだっ…ずっと寂しくて…夕陽の傍にずっといたくてもいられなくて、苦しくて」

夕陽の目が、また、潤んでくる。

「…院長に頼み込んで、週一で、大学病院の方に診察に行くことを条件に、分院で働くことを許された…やっと、夕陽の傍にいられる…夕陽の傍に、いてもいいかな?」

「…いいに」
「…ん?」


「…いいに、決まってるじゃないですか?私と…結婚してくれるんですよね?」

夕陽の言葉に、圭吾は笑みを浮かべて頷いた。

「…勿論だよ」
「…圭吾さん…会いたかったよー」

「…俺も会いたかったよ…夕陽、泣きすぎたよ」

夕陽の抱き締め、ずっと背中をさすり続けた圭吾。

少し落ち着いた夕陽の顔を覗きこんで、甘い言葉を囁いた。

「…夕陽を、全て俺のものにしても良い?」
「…ぅん、全部、圭吾さんにあげます」

圭吾はずっと待っていた。

夕陽が大人になるのを。

夕陽もずっと待っていた。

圭吾が自分を抱いてくれることを…


この日、二人はようやく一線を越えて、大人の関係になった、
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